10月12日(木) 朝倉台盛春クラブ10月のハイキングは、伊賀市青山町の阿保宿周辺を散策しました。

近鉄電車で青山町駅に行き出発式です。

まず初めにこの地域一帯の守り神として信仰を集めている「大村神社」を参拝しました。

同神社の主神は、阿保氏族の始祖「息速別命(いこはやわけのみこと)」で、第11代崇仁天皇の皇子、倭姫尊の弟君です。境内には「要石」が奉斎されており、地震除災の霊石として古今御神威を発揮され毎年、9月1日の防災の日に地震助祭祈願大祭が催行されています

次いで、国の重要文化財「宝殿」を拝見しました。宝殿は春日造りで屋根は入母屋桧皮葺きで、全般に形状がよく整い軒廻りなどの彫刻と色彩は素晴らしく、桃山時代建築美の特徴をよく伝えているといわれています。もう一つ見逃せないのは、虫食い鐘です。神仏習合の名残のこの鐘は、境内にあった禅定寺(廃寺)のもので、廃寺の際に大村神社のものとして残されました。

この鐘にはいわれがあり、諸国から寄進を集めて、明暦2年(1656)鋳造したが、その中に大和の国葛城の豪家の娘愛蔵の鐘を鋳込んだところ、その「たたり」で死んだ娘の亡霊によって鍾乳(こぶ)が全部落ちたといわれています。科学的には鋳造後の金属の変質によるが、娘の「恨みの一念」との伝説が残っています。日本三奇鐘の一つとされ、他の二鐘は京都府宮津市の成相寺、和歌山県川辺町の道成寺の鐘です。

次は今回ハイクの目玉である「川上ダム」の見学です。
同ダムは前深瀬川、木津川及び淀川の治水と伊賀市の上水道水確保のため建設され、令和5年3月、完工した重力式コンクリートダムです。規模は、堤高84m、堤頂長334m、総貯水量3100万㎥、総工費約1080億円です
まず、管理棟内で同ダムの概要を、パワーポイントを観ながら、職員の説明を受けました。
その後、職員の案内でダムの中や、管理用水力発電設備、ダム底などを見学させていただきました。

昼食はダム併設の公園で頂きました。

昼食後は、阿保宿に向かいました。

同宿は大和と伊勢を結ぶ初瀬街道(伊勢街道)が通じており、上野街道や八知街道との分岐点であったことから古くから交通上の要地として賑わいを見せていました。伝統的建築物である町屋建築も存在し、大和から伊勢を往復する人の目印となった常夜灯も残っています。

周辺には、息速別命(前述)の御墓(阿保親王墓)や息速別命の子孫一族の墓と伝えられる七つ塚古墳(七つの横穴式円墳)があります。また、第45代聖武天皇が藤原広嗣の乱を避け、伊賀、伊勢を越えて行幸の際、一夜を明かされた宮居跡である阿保頓宮跡があります。同跡はその後600年間続いた斎王(天皇の名代として伊勢神宮に使える皇女)の往復時の宿泊所の跡でもあります。

今回のハイキングの締めくくりは、木津川に架かる阿保橋の畔に建立された「菅笠日記の碑」を見学しました。同碑は、江戸時代の国学者・本居信長が吉野の花見に出かけた時の道中日記「菅笠日記」で、阿保を訪れた時の想いが綴られています。作中に宣長が阿保の川(木津川)を歩いて渡ったことが記されており、
この日記のゆかりの場所として、昭和31年に「菅笠日記の碑」が建立されました。
今回も秋晴れの晴天に恵まれ、行程もなだらかな道のりで楽しいハイキングでした。
参加者17名(女性10名、男性7名)。        文責 渡真利

2023年10月30日